江華へ      

 右写真の広い仁川空港を機は移動し、19時20分にタラップを降りて、待っていたバスに乗る。バスでターミナルの中央付近に移動する。今回は、入出国カードをすべて日本語で書いたらどうなるだろうかと実験することにした。結果として、名前だけは英語(ローマ字)で書きなさいと注意を受けるが、一応通過させてくれた。
 まずは、換金だ。今回の韓国の旅は、物価の高い都市部が多いので、少し多めに換金しておく。15万円を換金すると162万wになった。左の写真のようにかなりかさばるが、すごい金持ちになった気がする。
 今日の予定は、この後、江華市へ移動するだけだ。ところが今回、この移動の情報が全く手に入らなかった。でも、ソウルのどこかのバスターミナルへ行けば、すんなり解決するだろうと安易に考えていた。空港の案内へ行って聞くと、左端の観光案内へ行けと言われた。観光案内で江華への行き方をたずねると、「えっ今からですか?」という感じで驚いていたが、新村のバスターミナルから出ていて、22時が最終だということを教えてくれた。
 急いで空港の外に出て、教えられた600番のバス乗り場を探すが見つからない。案内板を見るが、3ケタの番号すら見つからない。やっと600番台の乗り場を見つけて、そこにちょうど停まっていたバスに乗り込む。運転手に「シンチョンカヨ?」と聞くと、「カヨ」と言う。鼻音は日本人が苦手なので意識してきちんと発音したつもりだったが、このやりとりがこの後、おもしろいエピソードを生むことになる。運転手は差し出した1万wをもって札売場に行き、6500Wのチケットを買ってきてくれた。

 バスは、快調にソウルへ向かって走る。20時52分、松亭を過ぎ、金浦空港を通る。漢川を渡れば、すぐに新村だろう...。と思っていると、いつまでたってもバスは漢川の南側を走っている。そうして左手に南山タワーも見えてきて、ヨイ島の国会議事堂も過ぎていくと不安になってきた。バスは、ついに漢川を渡って北上する。竜山の街、そして左手にソウル駅が見えてきて、不安はさらに増してきた。ぐるりと回って新村に行くのだろうか。
 南大門を通過して、市庁前でバスが停まった。運転手は私の方に向いてここが「シチョン」だと言う。明らかに新村ではなく市庁なので、私は「シンチョン」ではないとい言う。2〜3度、「シンチョン」を連呼して、やっと運転手は私の主張に気がついたようだ。日本人はこのあたりのホテルで宿泊すると考えるのが普通なので、無理もないことなのだが、意識して発音した「シンチョン」が通じなかったのも少々ショックだった。そこからの運転手の行動が、日本では考えられないものであった。運転手はバスを路上に停めたまま、バスを降り、道路の真ん中に飛び出してタクシーを止めたのである。そしてタクシーの運転手に何か話した後、再びバスに戻って私を引っ張って降ろし、タクシーに乗せて、運転手に言ってあるからこれで行けと言う(たぶん)のである。手際のいい解決法だが、業務中の運転手としては予想できない行動に、私はあっけにとられてしまった。
 タクシーの運転手にシンチョンの江華行きのバスターミナルに行きたいと言い、再び間違われると困るので地図を見せる。運転手は地図を見るとすぐに、今いる所と目的地を現地の方位に合わせて渡してくれた。そして、ソウルの道をがんがんとばして新村に着く。9時37分、新村駅から少し離れたところでタクシーは停まった。ここがバスターミナルだという。3500Wを支払いタクシーを降りる。
 予想していた鉄筋のバスターミナルではない。右写真のように駐車場にバラック小屋が建っているといったところなのである。確かにバスは2台ほど停まっている。小屋の中には、チケットの自動販売機が3台あって、そこにカンファの文字を見つけて、私は初めて安堵した。でも、もし新村駅前でバスを降りたら、ここにたどり着けただろうか。そう考えたらここまでのアクシデントも必ずしも悪いことではないだろう。そこで3900wのチケットを買い、一応行き先を運転手に確認してバスに乗る。

 21時40分、バスは新村バスターミナルを出発した。バスは先ほど通った道をもどる形で江華島に向かっている。松亭バス停には10時02分着、結果からいえば、江華島へ行くには、ここで空港バスを降りて、江華行きバスに乗り換えるのが、もっとも合理的な選択だったわけである。バスは歌謡曲を流しながら走っていく。私は今回もってきたMP3プレーヤーの音楽を聴く。
 乗客は、途中でどんどん減ってきたので、再び不安になってきた。やがて大きな橋を渡り、少し行って街角で停まった。残りの数人もここで降りる。どうもここが、江華バスターミナルのようである。下りてみると、確かにバスターミナルの建物もある。しかし見渡しても、まわりにほとんど建物がないばかりか、宿泊施設も見あたらない。街外れのターミナルのようである。時刻は23時を過ぎている。仕方ないので、街の中心だと思われる方向に歩いていくことにする。
 やがて、市街地に入り、「ヨカン」のハングルと温泉マークのネオンが見えてきたので、一安心。とはいっても、もう食堂は開いていないので、コンビニを探し、その近くのハンイル荘旅館(日韓親善って感じがする名前である)に入る。アジュマに宿賃を聞くと、五万wだと言う。高いので驚いて聞き返すと、「アガシがなんとか...」と言っている。ハンジャンだと主張すると、四万wと言う。まだ高いと思ったが、これ以上ウロウロするのもいやだから、宿泊を決める。309号に案内されて、説明を受ける。アジュマは、キーをもって出ようとしていたが、呼び止めてキーを受け取り、荷を降ろす。

 すぐに、チェックしていたコンビニに買い物に出る。韓国では、コンビニといえども弁当ものや調理された惣菜はほとんど見つけることができないことが多い。キムパブがあればいい方だ。結局、左の写真の通り、練り物とペチュキムチ、イカチリにマッコルリと焼酎、バナナ牛乳を買った。今日は、不確定要素が多く、非常に疲れた。もう0時を回っていたので、テレビを見ながら寝る。
 この旅館には、他では見られないものもあった。それが壁の上部にこれ見よがしに設置されている右写真の避難具である。宿では避難経路を気にする私だが、これがあるのとないのとでは気分的にだいぶ違う。とは言っても、よく見るとたよりないロープが入っているだけのようである。夜間の火災で、酔った人間が、このロープにぶら下がるのは、少々危険だ。
 明日からは、いよいよ歴史と伝説の島:江華島めぐりが始まる。この島は、MBCベスト劇場のドラマ「花」の舞台である。このドラマは、江華島の観光地を巡るストーリーなので、美しいシーンの多いドラマであり、MC The Maxのミュージックビデオにも使われた秀作なのである。今回の江華島行きも、このドラマの影響で早まったと言える。


   2003 12/26