塔寺から鎮安へ 

 馬耳山の鞍部から塔寺の方へ下る。もう6時になろうとしていることもあって、だいぶ薄暗くなったので意気込んで下ろうとすると、あっけなく寺に到着した。しかしそこは、塔寺ではなく銀水寺であった。この寺の中の壁には、たぶん寄進者であろうかずらりと小さな仏に電子の明かりが並んでいる。韓国の寺は、遠慮なく先進技術を取り入れている。その反面、直径2mはあろうかと思う大太鼓のある建物はほったて小屋みたいなものである。一番下のキノコのような形の丸屋根の建物がおもしろい。屋根が赤に塗られており、黒で螺旋が描かれている。大きな冷蔵庫が軒先に2つも並んでいて、この寺のお茶室かもしれないが、外見からではわからない。
 寺を少し離れると雄馬耳山全体が見えて、よい景色となる。というわけで、カメラを向けたが、ふと見ると写真屋がここは私の縄張りだという雰囲気で陣取っている。そそくさと右の写真を一枚撮って先を急ぐ。トイレは、この寺からの下り口に二人組の簡易トイレ風のものが3基備わっている。
 銀水寺は写真のように雄馬耳山の基部の寺であった。そこから雌馬耳山の基部にそのまま回り込みながら下ったところに有名な塔寺があるのである。馬耳山の鞍部からあっという間の距離である。
 6時過ぎには石積みだらけの観客のごった返す塔寺に到着した。この寺は、写真のように覆い被さるような雌馬耳山の絶壁の下に石積みの中に埋もれるようにたたずんでいる。向こうの方にちょこんと見えているのが雄馬耳峰である。石塔だらけの寺だが、奥の方にある2つの石塔は特に立派で、その奇異な姿には驚かされる。しかし、雑踏のせいか寺としては落ち着きがない。
 多くの人は石塔の間を登り、寺を参っているようである。しかし、私はこれからどうやって帰るかというほうが問題であった。とはいっても、やっと今日の旅程はほぼ終了だ。写真にもある寺のすぐ前にある売店で2000wのビールを買ってぐっと空ける。イヤー極楽、極楽。
 するとよいにおいがしてきた。トウモロコシをゆがくにおいである。釜山で食べた味気ないトウモロコシのいやな思い出があったが、考えれば南原で食事をして以来、何も口にしていないではないか。それにここのトウモロコシは、日本のスイートコーンのように粒の色がランダムである。我慢できずにトウモロコシ3本2000wを買った。日本とは違って、もちもちとした食感だが、塩ではなく砂糖を塗りたくっているのはちょっといただけない。しかし、おなかがすいていたからか、まあまあおいしく食べることができた。
 ちょっと下ったところに駐車場とバス乗り場があったが、元々こちら側はバスの便が少なく、帰りのバスは期待できない。運良くタクシーが停まっていたので、交渉すると1万wで鎮安に行くという。もう陽も落ちかけているので、タクシーに乗って鎮安に向かうことにする。馬耳山の南からぐるりと回るこの道もなかなかきれに整備されていて、道沿いに花も植えられている。すぐに鎮安の町へ着いて、鎮安市場の前でおろしてもらう。
 いったん金を取りに馬耳荘へ帰り、食事と買い出しに向かう。コンビニはないようだ。スーパーで、写真のような酒やジュース類、今日の肴を買う。市場の入口に大きな食堂があったので入ってみる。ビビンネンミョンとビールを頼むが、アガシにはメクチュの発音がわかりにくかったようだ。食後、早々に旅館に帰る。
 おでんとさつまあげのようなもの、ニンニク漬け、ミニトマトを肴に焼酎「サン」をちびちびやりながら、テレビを見る。KBSでは、のど自慢をやっている。野外でやっている他はほとんどNHKのど自慢だが、歌う人ののりが違う。どの人も歌も踊りもとても楽しんでいる。MBCにすると、「芸能通信」をやっている。しばらく見ていると、BoAが出てきて日本語も交えて撮影している。
 テレビを見ながら明日の徳裕山行きの計画をする。さすがに日帰りはできそうもないから、明日は徳裕山の麓の九千洞までの行程だけになってしまう。この旅行ではもっともゆっくりできそうだ。ふと見ると、チャンナラとヤンドングンが絡んでいるドラマをやっている。そう、ニューノンストップだ。日本では今は絶滅したシットコムを見ているうちに、今日の疲れがどっと押し寄せて眠りについたのであった。

   2003 08/15