影島実弾射撃場

 射撃場は、影島の町はずれの海辺にある。階段を上ると外で待っていた従業員が私に声をかける。片言だがちゃんと日本語で迎え入れ、フロントに案内された。中のベンチではいくつかの銃のパネルがあって、それを指しながら5人ほどの客に対して、職員が何か説明している。フロントの女性は、日本語が堪能で、どんな銃があってどんな性格なのかと、その値段を説明してくれた。はじめての経験なので最初は、一般の銃をすすめていたが、どうせならと私は44口径バイソンマグナムに目をつけた。このダーティーハリーでも使われた銃の反動の衝撃は他の銃の二倍ぐらいあるそうだ。が、特に危険はないという。値段も他の銃より1万w高いだけだ。何度も危険がないことを確認して、バイソンマグナムに決めた。十発の射撃で5万wだ。1発5百円は、高いのか安いのか?支払いは後払いだ。
 ここで銃について説明があるのかと思えば、男性がこちらに来いと言うのでついていくと、薄暗い2畳ほどの小さな部屋に通された。向こうはなんか映画のセットのような岩山があって、男が大きな紙を広げてワイヤーにつけると、すぐにツツツーとその紙は20m程向こうの岩山に送られた。それは的だったのだ。ここで、打つんだーと考えていると、男はそこにあったロッカーから無造作に銃を取り出し、私に手渡した。まずは射撃場の案内かと思っていたのでびっくりしたが、ずしりと重いその鉄の固まりがバイソンマグナムであった。猟銃やクレー射撃銃なら何度も持ったことがあるが、やっぱり実物となるとちょっと緊張感が走る。しかし、威力はあるといってもこんな重いもんもって走り回るのはごめんである。
 次に右手にサポーターをする。これは右手が曲がらないようにするもので、反動が大きくてもこれなら銃が体に向いたりすることはない。次に銃を持って、構えの指導を受ける。肩幅より少し小さめに足を開いて、右腕を伸ばし銃の底を支えるように左手を添える。そしてこの姿勢でトリガーを引く。カチン。思ったより軽い。2度ほど練習すると、男は再び私から銃を取り上げ、用意した弾をリボルバーに装填する。映画の一場面のようでかっこいい。今考えるとこの弾の装填もやらしてもらったら良かったと思った。そして、耳当てを渡され、それをすると銃を渡される。後でパンフレットを見ると防弾チョッキとめがねもしているが、それはしなかった。
 いよいよ本射撃だ。思っていたよりすぐに実射することになったので、実感がわかないが、ゆっくりとねらう...とガンと衝撃があった。発砲したのだ。ねらいが定まる前に撃ってしまった。そのことを言おうと振り向くと、銃も一緒にその男の方に向こうとしたので、その男は飛び上がって制止した。トリガーがあまりに軽いのだ。そのまま、4発撃つが、派手な音と衝撃はあるが弾が飛んでいく感じはない。残りの4発を充填してもらいながら、当たってるのって聞くと、5発目は8点だったという。どうも撃っている気がしないのでちょっと嫌になったが、そのまま4発撃った。トリガーが軽すぎてねらう前に弾が出てしまう。最後の一発はトリガーから指を離して十分ねらうことにする。先端の突起と撃鉄の上の突起を的に会わせてゆっくりトリガーを引く。パンと最後の弾が飛び出た。
 「最後はど真ん中ですよ。」銃を降ろす私に男は言った。「なんだ、きちんとねらうことができれば、ちゃんと当たるんだ。」と思ったが、それを確かめる弾はもうない。銃の手応えは思ったよりも軽い。それと同時にPS2の「コード・ベロニカ」の、マグナムを撃つ反動や音がよく似ているなと感心した。しかし、口径が少し大きいからといって、そんなに威力が違うものなのか。ここには45口径の銃もあるが、それよりもはるかに今マグナムの反動が大きいというのも不思議だ。
 最後に男は、的を引き寄せて回収した。フロントに行き、5万wを支払うと、その的を封筒に入れて渡してくれた。後でパンフレットをよく見ると、得点が良い者は記念写真を残してもらったり、射撃がサービスされたりするらしい。まあはじめての者にそれを言う必要もないだろうが...。
 射撃場を出て車道に出ると、タクシーがいたのでそれに乗った。そして釜山中央郵便局まで行く。今度は乗ってすぐに真面目そうな運転手だとわかったので、気にとめなかったが、ほとんど同じ距離なのにやはり車代はぐっと安く、3400wだった。真面目と言っても、運転中にもかかわらず、ペットボトルのお茶をおもむろに出して平気で飲むところは日本では見られないところだ。

   2002' 8/28