フェリーターミナル

 昼のチャガルチ市場は、さほど賑やかとは言えない。私は、中央路沿いに明日の出航に備えて、港に行ってみることにした。途中、登山用品店もあった。南浦洞の交差点は、横断歩道がなく渡れないので、しばらく影島大橋の方に歩いて行ったが、わたれそうもない。そのすぐ横は、韓薬市場で遠目にも何か変な物体がたくさん売られている。仕方なく引き返して、南浦洞の地下道に潜り、道路を渡る。再び陸上にでたところは大工事中で、パンフレットによるとここにロッテ?ができるそうだ。そこから釜山大橋に続く港の前の通りに出る。
 目の前に近代的な建物が見えてきた。どうやらここがフェリーターミナルだろう。いい加減足も限界に近づいてきていたが、大きな歩道橋を渡ってその建物の中へ入ってみた。中へ入り、待合室の座席に座り、案内本にあった国際フェリーターミナルの内部の見取り図と比較してみる。でも、どうみても違うし、なんかおかしい。今日も日本行きのフェリーが出るはずなのに、日本人なんて一人も見あたらないし、第一切符売り場にも掲示板には日本の地名がない。おかしいなあと釜山の地図をもう一度見てみると、ここは沿岸旅客船ターミナルで、もう少し先に国際フェリーターミナルがあるではないか。がっかりして、炎天下、引きずるような足でそちらへ向かう。
中央道駅前交差点を曲がり税関の前を通ると、ゲートがあり、やっと独特の形をしたターミナルが正面に見えた。さらに、ゲートからターミナルまでの直線の長いこと、やっとの思いでターミナルに入った。案内書通りの間取りだ。二階の出国ゲートを確認し、安心して中央の売店でビールを買った。うっ...冷えていないビールなんか売るなよな...。と、悪い印象のまま1階の入国ゲート前の案内に行った。そこには日本語の釜山案内があるはずだ。今の釜山はアジア大会前で、いろいろとパンフレットがそろっている。特に見やすいのは、「まるごと釜山」だ。ハングルと日本語で地名が書かれた地図も見やすいし、いろんな視点で肩の凝らない現実的な案内がしてある。
 そしてふと目にとまったパンフレットが「影島実弾射撃場」だった。日本では考えられないピストルの実弾射撃が、この国ではできる。人間を殺すことを前提に作られた兵器に直接触れることは、日本ではほとんどない。しかし、世界の紛争現場では当たり前に使われ、娯楽(映画やTVドラマ、ゲーム)でも当たり前のように出てくる武器を知ることは、これからの国際理解にも役立つ事になるだろう。ましてやこの鉄砲屋の息子が、今まで一度も実弾を撃ったことがないのも情けない。
 そのパンフレットには値段が書かれていなかったが、まあ大した額ではないであろう。とちょっと行ってみる気になった。ターミナル前の直線道路にはタクシーがずらりと並んでいる。先頭の運転手はちょっと目つきが怪しいが、迷うことなくその一般のタクシーに乗り込み、行き先を告げた。韓国の一般タクシーは日本人観光客をカモにする場合もあると聞く。私は座席の真ん中に座り、地図を片手に風景とメーターをにらんだ。影島に渡り、町中を走るようになると、メーターの上がり方が不自然なのに気がついた。運転手は始終バックミラーをみているし、ちょっと窓の外を見たときにメーターが上がるのだ。怪しいなと思ったので、一度フェイントをかますとしっかりとメーターが一気に二つ上がるのを見てしまった。結局、射撃場について4500wを取られた。帰りは3400wだったので、ぼられたのかもしれないが、それでも模範タクシーを利用するよりは安く上がったということだ。

   2002' 8/28