浦項から釜山へ

 11:50、浦項のバスターミナルに到着。運転手が57分までここに停まることを説明したが、きょとんとしていると、運転手は私の手に57という数字を書いて教えてくれた。あまり時間はなかったが、一応カメラを探しに降りる。カメラを7千wで購入してバスに乗りこみ、出発の時間を待っていると、二人の元気な30歳くらいのアジョシが入ってきた。その一人が、みんなに何かチケットのようなものを配りだした。いったい何なのか分からないので、不安な視線を運転手に投げかけたが、運転手は知らんぷり。残りの一人が正面前に気をつけをして、丁重なご挨拶をする。そしておもむろに腕時計のようなものを出して、金額など何か熱意を込めて説明しだした。ああ物売りか。興味がないので、これから入る釜山での宿を決めるために案内書に目を移した。そのうち彼らは出ていき、バスは出発した。ここは、「frends」でジフンが軍役についていた街だそうだな。寒風吹きすさぶ松林の街って雰囲気だが...。
 広い盆地の中を走るバスの車窓からは、伝統的な民家が多く目に付きだした。そろそろこの辺は慶州である。そのうち正面に不気味なほど大きな門(山門のようだが、どう見ても、幅が50m以上はあり、道をまたいでいる。また、その支柱は鉄柱のようである。)が見えてきだした。近づいてくるとこれが慶州の高速1号線の料金所であることが分かった。さすが、日本ではみられない文化遺産の国立公園のある新羅の古都、慶州である。12:37に高速に入り、そのまま釜山に向かう。
 この辺の山林は、内陸に入ったためか東海の松林から雑木林になっている。今まで見た限り、韓国の山には杉や檜の建材用の人工林があまり見られない。杉花粉に悩まされている私にとってはいいことだが、段々畑もあまりなく、山はほとんど遊ばしているようにも感じられる。
 やがて、右手になかなか登頂意欲をそそる山が見えてくる。おそらく加智山から鷲棲山に続く山稜だろう。 12:54、蔚山高速道路へのJCTを通過。1時過ぎ釜山ICを降り、市街に入る。と...バスは北に向いて走り出した。地図では高速バスターミナルは釜山ICの南、トンネじゃないのか。このままいったいどこへ行くんだ?と、不安がよぎったが、釜山から遠ざかるのであれば運転手が何か指示してくれるだろう。
 運転手が言った。「..チハッチョル...」そうだこの道は、地下鉄駅ぞいだ。バスの停まった道路の歩道をみると、地下鉄への階段がある。地下鉄なら確実に釜山の中心部に行ける。トンネのバスターミナルで降りてから、地下鉄駅まで遠いのでどうしようかと思っていたところだ。実際ここで多くの乗客が降りていく。「チハッチョル?」と運転手に確認して、私も急いで降りた。
 降りた地下鉄の駅は杜実(ドゥシル)で、地下鉄一号線でも北から4番目である。私は一応チャガルチ市場か国際フェリーターミナル付近の旅館の宿泊を考えていたので、ここからずっと南に行く必要がある。だいたい地下鉄は、ソウルと同じようなものである。相変わらず、でかい愛想のない自販機で6百wの切符を買う。改札も同様にバーを押して乗り込む。ただ、ここも同じ駅でも登りと下りで改札が違う場合があるようなので、注意が必要である。私とほぼ同じに犬(シースー?)を連れた6歳くらいの女の子が改札を通った。まず日本の地下鉄にペットを連れた人は見かけないので、ちょっと気になった...。
 やがて地下鉄が入ってきたので、乗りこんだ。特に変わったところはない。黄色のラインのある誰も座っていないシートがある。韓国では老人がいたら席を譲るのが当たり前なので、シルバーシートは必要ないとも聞いたが、これが現実なのかも知れない。ふと前を見ると、目の前の座席に先ほどの女の子が犬を抱いてちょこんと座っている。なかなかやんちゃな犬で、そのうち、女の子を振りほどいて隣の席にも進出してきた。駅ごとに人が入れ替わるが、犬にびくびくしている人、全く平気な人、なめられて飛び上がる人などいろいろな韓国人の表情がおもしろい。そのうち、女の子をたしなめる人もいたりしたが、女の子は平気である。犬は床に降りたり座席に上がったりで、あまり好ましい風景とも言えない。中には犬が好きなのか抱いてやる人も現れる。でも一般的には大迷惑と言った感じだ。女の子は南浦洞で降りてしまって、一気に静かになった。

   2002' 8/28