五色薬水

 フィルムがなくなったので、角の店でカメラを買って五色薬水のある沢に向かう。薬水橋を渡ると薬水はすぐに分かる。川底の一枚岩に穴が開いていてそこに人が群がっているからだ。この薬水は朝鮮王朝中期(約1500年頃)、五色石寺の僧が偶然に岩の上に湧き出ている薬水を発見したものだそうだ。五色とは、寺の名前からという説と5味の水が出るからだという説がある。岩の中の3カ所の穴から泉が湧き出ていて、上流の泉は鉄分が多く、下流の2つは炭酸成分が多いらしい。泉から湧き出る水の量は千五百年間変らず一定で、胃腸病、神経衰弱、貧血などに効能があるとされ、全国から多くの人が集まっているそうだ。また、この薬水でご飯を炊けば色が美味しく青いご飯が炊けるそうだ。
 降り口には僧がくみ取っている写真入りの説明の看板があり、歓迎の意味の文字の書かれたアーチがかかっている。階段を下りると、上流の方に行った。二十人くらいの人が取り囲んでいる場所をのぞき込むと、岩の中に深さ50cmほどの穴が開けられていた。みんなは手に手に赤い(希に青もある)プラスチックの浅いコップを持っていて順番にそれでわき出てくる水をすくって飲んでいる。私もザックを置き、束草でもらったマグカップを出して順番を待つことにした。しかし、日本同様、アジュマの集団はなかなか動かない。 いつになるかと思っていたら雨がぱらぱら降ってきた。するとうまく順番が回り出して、五分もすると自分の番が巡ってきた。薬水は岩から1分に100mlほどしみ出している。すくって飲んでみると、わずかに鉄分と酸味のある水である。日本でいう冷鉱泉であろう。ただ岩からしみ出しているというのは神秘的で実際の効能以上にありがたみがあるのだろう。
 傘をさすほどでもないが雨も降っているので、急いでバス停に行くことにする。川沿いの道を下っていけばバス停のはずだ。その道沿いにも食堂が並んでいる。ここの食堂には店の前に水槽が置いてあって20cmくらいのスマートな川魚がたくさん泳いでいる。その魚は鮎に似ているが、背びれがちょっと違うような気がする。まさに昼時だが、ここも閑散としている。しばらく歩くと、やがて国道に出て、そこにバス停もある。道を挟んで向こうに広場があり、バスが一台待っている。そこには売店もあるので、売店のアジョシに「カンヌンカヨ。バスオディエヨ」と聞くと、停まっているバスを指さして、いったん襄陽に出て、そこで乗り換えて江陵にいけ(たぶん)と行われた。とりあえず襄陽まで行けば主要幹線沿いだから何とかなるだろうと、1270wを支払って、この13:35発襄陽行きバスに乗る。
 五色温泉から襄陽へは先日も行っているが、常に不安なのはバスターミナルについても漢字がほとんど使っていないので、そこがどこだか分からないことだ。終点だとは思うが、くれぐれも居眠りして、乗り越さないように..。襄陽は、韓国松茸の本場中の本場、福岡空港で会ったユンさんによるとまさに山にはえまくっているとのこと..一度、本来の姿の豊かな松林(松茸の生えるのは条件の悪い松林なのだが..)で松茸狩りしてみたいものだ。もう少し後なら...。

   2002' 8/26