五色の山菜定食

 道を下ると五色商店街に降りてきた。街の前で案内書を開いてみる。五色温泉で最も人気のある食堂として「五色南雪岳食堂」が一つ載っていたので、そこを探して昼食をとることにする。タクペクスクが名物らしいが、一人で食べれらるものではなさそうなので、もう一つの五色の名物:山菜定食を食べてみよう。昼時だというのに客は少なく閑散としている。呼び込みは元気だが、肝心の客がいない。ガイドの写真を片手に探すと、すぐに五色南雪岳食堂は見つかった。そこにも呼びこみがいて、勝俣というタレントに似た背の低い愛想のいい若い男だ。私と目が合うと、さっそく近づいてきた。ハングルが分からなかったので「サンサイテイショクイソヨ。」とほとんど日本語で聞いた。勝俣君はちょっと考えたが、ガイドの「山菜定食」という漢字を見せると、あると言って店に案内した。この五色で最も人気のあるだろう?この食堂でも客は私しかいない。平日とはいえ、韓国でも五本の指に入る温泉地+薬水の名所も不景気なのか。
 席に着くと山菜定食とビールを頼む。しばらく待つと、どっともってきた。なお、日本人なので気を利かして、割りばしも持ってきてくれたが、それは丁重に断った。私にはチョッカラでも何ら使いにくくはないが、最近多い箸の持ち方のおかしい日本人には重く細長いチョッカラは不評なのだろう。ミッパンチャンもいろいろあるので、写真に撮ったのだが、ほとんど写っていないのが残念。豆腐と青唐辛子、玉ネギの入った味噌汁のようなスープとご飯、5種ほどの山菜(青菜、ワラビ、シイタケ、?、ニンジン)の入った皿に、ウリキムチ?とペチュキムチ、オイキムチ、シソのしょうゆ漬け?、イモともやしのナムル、いりこの甘煮、鯖の素揚げの計10皿だったと思う。なかなか食べ応えがあり、どれもおいしいのだが、ミッパンチャンとはいえ、いりこや鯖が山菜定食に出るのは..?。
 写真を撮ったり、メモをしたりしているので気になるのか、アジュマが横に来てなにやら言いたそうにしている。仕方ないので、たくさんある皿の料理名を一応聞いた。まだ、不安な顔をしているので、この店の写真と案内の載ったガイド本を見せ、「イゴ、ヨギエヨ?」と聞いた。かみさんはやっと明るい顔をして、ホッとした感じでもどっていった。
 食事もすみ、勝俣君に「オルマエヨ」と聞くと「マノン」という。ビールも入れてなのに結構安いんだな(ビールは3千wほどとるのが普通)とけげんな顔をしたら、すると彼は目を輝かせて熱弁した。ハングルなので正確にはわからないが、要するにビールはサービスで安くしたとのことらしい。どうも私を日本の観光案内の調査に来た者とでも思ったらしい。「OK カムサンニダ」と店を出ようとすると、再び勝又君は、私の前に飛び出してきてビール代を安くしたことを確認しようとしている。「メクチュサービス カムサンニダ」と応答し、その場を去った。この店の前には、「金賞」と書いてある。何かで賞を取ったってことだ。前の店の看板には「KBS・・・」とある。KBSで紹介されたってことか。とにかく自分の店の差別化を図る努力には感服する。そして勝又君にも。日本の若者は偉くなってしまって、たいそうな夢は描くが、このように現実的な仕事にへたくそでも地道に熱心に努力する若者はほとんどいなくなってしまったからだ。

   2002' 8/26