巨済島へ

   中央洞で地下鉄を降り、陸上に上がり海岸にある沿岸旅客ターミナルに向かう。釜山も34度もあり、日差しもきつい。海岸通りに出ると、写真のように目の前にターミナルが見えてくる。釜山とはミスマッチのなかなか近代的な建物である。左手には関釜フェリー「はまゆう」が見える。ターミナルの正面の吊り橋をかたどった歩道橋で海岸道路を渡る。冷房の効いたターミナルに入り、正面の案内に向かう。巨済島に行きたいというと、髪の長い若い女性が売り場の方を指さす。カウンターに行き、16時発長承浦までのチケットを2万wで買う。流ちょうな英語で対応してくれるのだが、むしろ韓国語の方がわかりやすい。出発までまだ45分ほどある。さっきの観光案内で日本語と中国語が併記されている巨済島のパンフレットをもらう。
 時間があるので、ターミナル内の食堂で遅い昼食をとることにする。少々夏ばて気味なので、ククスでもたべようか。今まで食べたことのないものの方がおもしろいので、メニューを見て、モミルククス4500wを注文する。どんなものが出るか期待していたが、出てきたものは写真のようにざるそばである。たくわんとカットゥギと、キュウリの千切りの入った出汁もちょっと薄いがそば出汁で、茶色だけどわさびも付いている。原色の緑のザルがちょっと抵抗があったが、そばの色もそれらしい。食感はちょっとべちゃべちゃしているがそばそのものである。少しわさびを溶いて、ずるずると音を立てておいしくいただいた。
 その後、待合い席でパンフレットを見ながら巨済の旅程を考える。海金剛が見たかったが、どうもすべて外島とセットとして2時間半以上のコースになっているようだ。今から行けば今日は乗れない可能性が大きい。冬ソナファンには行きたいところなのだろうが島のコンセプトも高い入島料も抵抗がある。15時45分になっても何の動きもないので少々心配になる。15時47分、急に職員が入場ゲートに来て改札が始まる。すぐに並ぶ。金属探知器のようなものをくぐるが、荷物を持ったままでもなんの反応もない。外国人なのでパスポートを出すように言われる。ノートに宿泊先を書けと言うのだが、まだ決まっていないと言うと、それなら取引先を書けという。バックパッカーの出で立ちなのだが、どうもビジネス客だと思われていたらしい。観光だというと、パスポートの内容をメモしてそのまま行くように言われた。そこからは緑色のチューブのような通路を通って乗り場まで行く。
 高架の通路を下ると写真のような双胴の高速船が見えてくる。これが巨済島長承津行きのロイルフェリーである。横の入口からは乗用車程度なら十数台入りそうな甲板が見える。みんなに続いて船に乗り込む。ウルルン島行きの高速艇よりは一回り小さいが作りは同じようで、暗い一階の売店横から二階に上る。チケットを見ると278番である。その席に行くと最後部の中程の窮屈な席で、景色も期待できない。出港時が近づいてきたが、客は三分の一程度で前の方の席はほとんど空いている。そこで窓際の景色の良い席へ移る。定刻通り、16時に釜山港を出港する。まもなく、係員が半券をチェックしにまわってくる。席を移っているのでちょっと緊張したが、問題なくクリアした。
 船は西に向かう。写真のように釜山タワーとチャガルチ市場の前を海から眺めるのもなかなか旅情がある釜山港の突堤の先にはテトラがうずたかく積まれていて、灯台がある。あまり意識することのなかった影島の西岸の様子もよくわかる。釜山南部から影島への大橋が工事中なのだろう。その橋桁の間を通過すると外海だ。
 やがて、普通の番組を流していたテレビに突然カラーバーが出たかと思うと、避難器具の説明画面に変わって、その後、船と巨済島の紹介ビデオが流れた。外はしばらく多大浦あたりが見えていたが、もやが濃くて、やがて島影すら見えなくなってしまった。揺れもほとんどないので、ウトウトしているうちに船は巨済島に近づいていく。やがて前方に島影が見え、どんどん近づいてきた。
 16時49分、赤灯台を過ぎ、港内に入る。広い港で、どうもここが長承津のようだ。思ったよりは小さな街だが、港の裏手の山々は韓国では珍しく針葉樹林で被われているようだ。写真のように港の中央部には現代的な建物があり、その横に気球が上がっている。
  2006 08/10