毘盧峰登頂

 そこから少し上がると尾根に出て、道が分かれている。8:50 標高1145m。ピロボンはまっすぐ行くと二カ所に表示があるが、尾根沿いに登る道の方がずっと広い。表示旗もあり、上には何か宗教上の施設があるらしい。おばあちゃんもこの分岐にさしかかると、手を合わせ上に礼をしている。後から来る人は、全てそちらの方に登っていく。丁寧な人は、そこで四方を拝んで登っていく。礼の仕方は手を合わし、おしりを引く感じでちょっと変わっている。そこで休んでいると、坊さんと尼さん?が登ってきた。ちょっと興味を持ったが、雨も降りそうなので、先を急ぐことにする。
 登山道は、皆が登っていった尾根上の小ピークを回り込むようにトラバースしている。すると再び尾根に出た。そこには幅2mほどの「入山統制所(イブサントンジェソ)」と書いた鍵のかかった緑色の小さな小屋があった。ここからは先ほど分かれた尾根の小ピークに行く道はついていない。
 やがて痩せ尾根となり、それまで、ミズナラとアカマツの林だったのが、モミが目立つようになると、少し下り鞍部に出た。9:15標高1150m。モミ林があるのは韓国では唯一この五台山であることを後で知ったが、日本ではそんなに珍しい光景ではないので、その時は特に印象はなかった。ここからピークまで1.1kmとの表示があるが、ここからが頂上までの直登で、本格的な登りとなる。
 どこから持ってきたのか、人の頭大から1mもある石(角の取れた丸い石ばかりだから川から持ってきたのだろう)が、1.5m程の幅に敷き詰めた道が続く。この道整備にどれほどの労力が使われたのであろうか。角材を使った階段もあり実に歩きやすい登山道である。また、登山中天気はよいとは言えず、ガスも出ていて展望もないが、ずっと適度な風も吹いていて気持ちがよい。
 標高1300mを越えると、風も強くなり、雨も少し降ってきて、急ぎ足となる。あとピロボンまで0.5mを示す道標のあたりには、シャジンやミヤマトリカブト(ほとんどが青紫だが、白いのもある)、シオガマなどの高山植物が見られるようになる。あと200mの表示があり、木の階段の急登となる。グングン高度を稼ぎ、階段の木が古くなってくると頂上はもう少しだ。
 登山地図によるといったん稜線に出て北に200mほど行くと頂上のはずなのだが、10:29いきなり頂上に到着した。頂上寸前まで樹林帯だが、頂上部は広場になっている。しかもガスの中おびただしいケルンが立っているので、いきなりの幻想的で神々しい光景に目を見張った。韓国の山の頂上には山の名と標高だけを刻んだ大きな石が立っている。ケルンは別にしてその他に人為的なものはほとんどなく、気持ちがいい。この山の周辺は寺のはずだが、山頂には日本のように奥の院を表す祠のようなものも一切ない。もちろん途中の道にも、地蔵等の石仏や後何丁とかいった道標など宗教登山の形跡は何もなかった。
  五台山は韓国で最高の森林地帯で、海拔1563mの主峰毘盧峰を中心に虎嶺峰、象王峰、頭老峰、東台山の5つの峰が蓮の花の形を形成しているように見えることから五台山(中国にも同名の名山がある)というらしい。また漢江の源流の山としても有名である。(今ではオデ川よりとチャンジュッ川が長いということが分かって、後者の川の上流が漢江源流となったらしいが)その他、この五台山の東部の山は、北面が北朝鮮の名山金剛山のミニチュア版という小金剛地区があり、南面はドラマ「秋の童話」で有名になった、東洋最大級とも言われるサミャン牧場の大草原もあり、観光地としてもなかなかのもんである。
 頂上で南への縦走路を探すと、広場の南に通行禁止(NoTrail)の標識が立ち、ロープが張ってある。また、実際おそらくそこにあった縦走路は藪におおわれようとしている。すなわち、予定していた虎嶺峰への縦走、およびスジョン庵を通って下山するという計画はあきらめるしかない。一応北に向かうと、案内板があって、象王峰、頭老峰への縦走はできるらしい。そこまでは考えていなかったのと、天気の悪化が予想されるので結局もと来た道を引き返すこととする。頂上で一休みしていると、やっとお出ましである。そうシマリス君である。私が落としたパンのお菓子のくずを喜んで食べている。

   2002' 8/27