へジャンクを食べる

 急にのどか乾いてきた。ビールの自販機はないので、ちょっと頼りなさそうな昔の日本にあったような5種類程度の自販からポカリスウェットを買って飲んだ。うっ..何と全く冷えていない。日本ならいい加減にしろよと思うが、まあいいやと、なま暖かいポカリを一気に胃袋に流し込んだ。夕食にしたいが、今は持ち合わせもないので、一度ホテルに帰ることにする。
 さて、夕食を食べに財布にお金を入れて再び外に出た。とはいっても、食堂はハングルだらけのメニューでなかなか難しい。また、焼き肉は食べないことにしていたので、コンロの載っているテーブルの並ぶ食堂は敬遠した。また、韓国の食堂には何となく一人で食事しにくい雰囲気があり、わいわいと賑やかに盛り上がっている食堂も、日本人一人が行くと水を差すようで、なかなか食堂を選ぶのも難しい。でも、せっかくだから典型的な江原道の韓国料理を食べたい。
 メインストリートを歩き、港の駐車場の前の食堂がたまたま客がいなかったので入った。テーブル席と座敷席がそれぞれ2つある程度の小さな食堂である。入ってテーブル席に座ると、狭間寛平に似た主人が注文を聞きに来た。他に客もいないので、ゆっくりと選べる。メニューをハングルで読み、何とか分かる料理を選ばなければならない。・・・へジャンクといういう部分に目がとまる。へジャンクは、牛の血の入ったもつ鍋で二日酔いにきくらしい。ウンソが生母に家に帰ったとき、労働者が頼んだメニューであり、今回ぜひとも食べたいものの一つである。さっそく、ピョソンジヘジャンク(骨と血の固まりの入ったへジャンク?)5千wとビールを注文した。水の他に、なんとおしぼりが出てきたが、主人はなかなか厨房に入ろうとしない。その時どやどやと10人くらいの家族が入ってきた。そして少し遅れて、女将さんが入ってきた。どうも料理を作るのは彼女らしい。
 ビールを飲みながらしばらく待っていたら、料理は後からきた団体の方が早く運ばれ出した。そしてそれからすぐにへジャンクも運ばれた。オイキムチ、カクテキ、青唐辛子のナムル、青菜のナムル、大根と海苔の酢の物、腸のキムチ?の6品のミッパンチャンにご飯とコチュジャンが50cm程の盆にずらりと並んでいる。へジャンクにはそれこそ5cmほどの骨や血の固まりが豪快に入っている。日本人にこのゼリーのようなものが牛の血だというと食べられない者もいるだろう。主人はそばに座って注文を取っている。主人に骨はどうするのかと身振りで聞くと、盆に出すのだという。また、主人が横を通ったときに、ミッパンチャンの名前を聞いたが、もちろんオイキムチとカクトゥギしか聞き取れなかった。腸のキムチ?は、キムチではないといっていたが、コリコリして酒の肴にはよい。「マドブソヨ?」と心配そうに聞いてきたが、手を振ってそうではないと答えた。骨を出して、血の固まりを食べた後、ご飯を入れて雑炊にして食べる。結構量もあるので、腹八分ってとこで明日の登山のエネルギーは補給された。料金を払い、席を立って「マシッソヨ」と言うと、主人は本当にうれしそうな顔をした。その顔はまさにカンペーチャンであった。
 その後、旅館に帰った。旅館の前ではテントのようなところで多くの人が飲み食いしている。いずれはこうやって語り合いたいが、今は会話ができないのでがまんだ。

   2002' 8/24