リムジンバスでソウルへ

 外はユン氏が言っていた通り雨、それも中途半端な雨で、昼過ぎというのに薄暗くうっとうしい。まあ、空港でぐずぐずしているより、すぐにでもソウルに行きたい。早速、リムジンバス乗り場に向かう。案内書によると明洞行きがあるはずだが...。と思って探すとなかなかない。乗り場のはずれで、やっと見つけた。しばらく待つと、明洞と書いたバスが入ってきた。どうも切符売り場もあるようようだが、せっかくだから運転手と話したい。はじめての韓国語の会話は、乗り込みながら「ミョンドン..カヨ?」であった。「ネ」という返事を聞いて、「オルマエヨ」と聞く。「ユクチョノン」とわかりやすい発音で運転手は言った。千と万の単位だけなら聞き取りやすい。「ユクチョノン?」と確認のため聞き返し、「ネ」を聞き、料金を差し出すと、料金箱に上から入れるように指示された。後ろの方は不安なのと、前の景色がよく見えるので、運転手の後ろに座った。日本と違って左ハンドルなので、ちょっと雰囲気が違う。
 やがてバスは走り出す。窓越しに見る景色は、樹木の植生や道路など、日本とまさに同じである。ところが、ちょっと街に入ると高層のアパートがいきなり建ち並ぶ。また、当たり前だが、記述がほとんどハングル文字ばかりである。前にソウルに来たときと比べると、漢字がきわめて少ないというよりはほとんど皆無である。ある程度は予測していたが、これでちょっと不安になった。実際、これから行く江原道の街は朝鮮戦争後、再生されたものがほとんどらしく、さらに漢字のない世界であった。すなわち音だけで言葉を理解しなければならないのである。
 ソウルへ向かう高速道路は広く、同じような光景が続くのでついウトウトしてしまい、はっと気づくと、右手に大きな川が流れている。大きな川は漢江しかないはずだが..リムジンバスは金甫空港経由だと聞いていたので、地図で確認するが、どうしても今走っている位置が分からない。車内放送もあるのだが、もちろん聞き取れない。地図を目を皿のようにして見るが、ハングルから地名の漢字は読みとれない。やがてバスは市街に入る。おそらくソウルなのだろうが、位置がまったく同定できない。その時は金甫空港経由で、ソウルに南から入ると思い込んでいたが、実は北から回り込むように進入していたのだった。まあ、途中が分からなくても南大門が見えて、すぐその次が明洞のはずだ。路上に現れるはずの南大門と「ナンデムン(シジャン)」の音だけは聞き逃すまいと神経を集中させていた。
 やがて明洞の「セジョンホテル」という運転手の叫びと共に、私以外は全て下りてしまったが、私にはもちろん分からない。視界に南山タワーが見え、南大門はまだかまだかとがんばっていた。と、「あっあれは最初の予定の明洞のソウル・プリンスだ。」ということは、...えっ..ここは明洞?。地図を見るとまさに世宗ホテルが明洞の入口にある。(何故か)このバスは明洞を西に向かっている!すると次が南大門なのか?
 といっても道は高架になっていて、バス停もないし外は雨。ほんとにここはソウルなのかも確信がない。その時「ナンデムン・・・」とのアナウンス..間違いない。そして、その時運転手も叫ぶ。たぶん、「(あんたはいつ下りるんだい!)」。まあ、バスは明洞から遠ざかっているわけだし、南大門市場で降りたらなら何とかなる!。と半分頭はパニクリながら、「降ります!」と叫んで、雨の南大門市場のバス停にどたばたと下りた。

   2002' 8/22