竜頭岩

 海岸線を東に歩いていくと、そのうち大きなホテルや海鮮料理店がぽつぽつと現れだした。そろそろ竜頭岩の近くに来たと思うが、向こうの済州の港やビル群も見通せるのに、それらしきものは見えない。海鮮料理屋の水槽のホヤやイシダイ、ヒラメやイカなどをのぞきながらそのまま歩く。やがて「ヨンドゥアム」のハングルが目につきはじめ、竜頭岩が近いことが分かる。
 車道は大きく右に曲がり、正面の竜頭岩公園の入り口には、二つのトルハルバンが迎えてくれる。でもまだ竜頭岩らしきものは見えない。公園の入り口は、高台になっていてそこから海岸を見下ろすと、やっと案内書の写真にある竜頭岩が見えた。大蛇が竜になろうとして山神の珠を盗んで舞い上がろうとしたときに、山神の矢に落とされた竜だといわれる岩だが、何のことはない粘度の低い溶岩が海まで流れてきてたまたまおもしろい形になった岩である。火山国日本ならこの手の岩は各地に見られる程度のものだ。
 あえて見に行くほどどものでもなさそうなので、どうしようかと思っていると、竜頭岩の手前の岩のくぼみにブルーシートを張って、何か作業をしている人たちがいるのに気づく。どうも海女らしい。おもしろそうなのでそこまで下りていく。途中、大きな岩穴があって、何か案内板もある。ブルーシートの横を通って竜頭岩の目の前に出る一応いくつか写真を撮って、歩道を通って上に上がる。竜頭岩の上には、にやけた人魚の像がある。この公園には次々と団体の客がきて、記念写真を撮っている。
 そのまま東へ歩くと、なんらかの偉人なのだろうか、石垣を積んだ墓が2つ並んでいる。その向こうに車が数台おける駐車場と公衆電話があり、案内板が立っている。その向こうは河口になっている。案内板を見ると、ここが「竜淵」で、「昔は多くの風流人がここの風景を楽しんだ」というようなちょっと文法的に分かりづらい日本語の説明がしてあった。川岸は切り立った岩になっているのであるが、あんまり風情のある風景でもないような気がする。そのまま川を渡ることはできないので、川沿いに南に歩く。しばらく歩くとこの漢川を渡る橋が見えたので、そちらに向かう。橋の上に出て川を眺める。下流はそれこそ風情のある岩場の続く沢になっている。(写真:まわりの雑踏があるのでいまいちだが...)上流もおもしろい岩の川岸だが、すぐ上を幹線道がおおってしまっている。しばらく竜淵を眺めた後、済州の街に向かう。

  H14.12.26-4