かわうそ

 昔、ある子どもが朝、釣りをしに海へ行きました。
その帰り道のことです。
いつもなら迷うことのない帰り道にどういうことか迷ってしまったのです。
自分ではまっすぐ歩いているつもりなのですが、いくら進んでも、歩けば歩くほど迷ってしまうのです。
そして、とうとう崖(がけ)のところまで来たとき暗くなってしまいました。
子でもはその崖にはえている木の根元に腰を下ろし、泣き出してしまいました。
その泣き声を聞きつけてやってきた人々はびっくりしました。
昼間でも通るのがむずかしい崖の上にいたからです。
「なんでこんなところに行ったのか。」
と言って、その子がわけを話すと、ある人が、
「この辺にはかわうそがでるけんの。きっとばかされたんよ」
と言いましたとさ。

  出典:二名津中学校「郷土の昔話」・・・平成4年度 浅野吉三郎(平礒39歳)伝,編集:みな(5417)