ホタルの季節    (令和元年6月改)

 初夏の子どもたちにとってとても楽しみの虫遊びといえば何といっても蛍がりでしょう。5月下旬〜6月初旬、微妙に点滅しながら小川の上を飛ぶ蛍の観察は、きわめて幻想的で情緒面でのアピールが強い割にお手軽という意味で子どもが自然に親しむには有効な体験になると思います。世知辛い社会の中であくせく働いている大人にとっても、ホタルの飛翔をぼんやり見つめることは心身をリフレッシュさせるために役立つのではないのでしょうか。最近の脳科学では、特に子どもではぼんやりすることの重要性が知られてきました。
 日本の蛍は図のような3種がほとんどです。三崎地域の川ホタルは本三崎の大川と二名津の大谷川でヘイケボタルが多く生息していますが、大型のゲンジボタルは確認されていません。しかし、正野谷にはきわめて貴重な陸生のヒメホタルが生育しています。
 蛍の幼虫の餌は貝類です。ヘイケボタルはカワニナ、ヒメホタルはじめじめした森林の中にいる陸生の貝を食べて成長します。
 ホタルが飛ぶのは夕方〜夜9時くらいで、成虫のホタルの寿命は約3日です。幼虫(これも光ります)は、カワニナ等の貝を食べて育ちますが、成虫になるとは水以外は食しません。ですからのどかに飛んでいるようにみえるホタルは、わずか三日の命の間に食事もせず伴侶を見つけ出し交尾し産卵まで済ますというかなりハードな目的を持って飛びまわっていることになります。
「鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす 」
本当にシビアな恋の虫なのですね。

 三崎地区ではほぼ確実にホタルに出会える3ヶ所のポイント(地図の★印の地点)があります。( )内はその地点と平成29年のピーク時に一度に確認できたホタル個体数ですので、ホタルがりの参考にしてください。

@ 二名津の大谷川、大山道の分かれ(22匹)
 平成8年ごろは二名津中学校から二名津の街中(向地区あたり)までホタルが飛んできていました。二名津小学校横から堀本製材工場あたりまでが観察ポイントで、大山道に登ったところでも少し見られます。二名津の大谷川の河川工事と木材工場建設という大規模な河川改修があったためにホタルは激減しました。しかし三崎地域では最もホタルが多いポイントです。

A 三崎の大川、R197陸橋下(5匹)
 平成20年ごろは毎日20匹くらいは確認できましたが、これも大規模な河川工事の結果、激減しました。現在最も多いのは陸橋下ですが、大川の工事は川岸から降りられるような部分も考慮して作られています。カワニナの数はかなり増えてきたのでが川遊び

B 正野の正野谷(6匹)
 昔は全国でも有数のヒメホタルの群生地の一つで、以前は藤のみの集落から正野小学校まで多数のヒメホタルが飛んできていましたそうですが、上手の道路拡張工事で生育地に大量の土砂を遠慮無く落としこまれほぼ絶滅したと思われていました。しかし平成29年の調査では久しぶりに生育が確認できました。

 蛍狩りは楽しいのですが暗く足下のわかりにくい状態での活動となります。特に現在ホタルが多くいる地点は護岸が垂直なコンクリートになっています。ガードレールすらないところもあります。上を向いて蛍を追って川へ落下する事故が十分予想されます。保護者はくれぐれも注意してください。 最近は私などには信じられないような大人の事故が増えています。どうも大人の監視下で守られて育った大人は、気の毒なことに子どもとたいして変わらない危機回避能力&対応能力しかないようです。私の経験では10歳あたりまでに危険に対応できる経験をしっかりさせてほしいと思います。小さな子どもには、ときに痛い目をしながらあえてあぶないことに挑戦し自らの能力を探ってスキルアップしていくDNAを持っています。でも、今の教育現場は事なかれ主義がまかり通って余計な安全指導をしています。自らが直面し主体的に判断したことのない行動はできません!過保護で育った大人は、自らの能力と限界の低さを十分に認識して無茶をしないように蛍狩りをしましょう。

私の子どものころ、出身地の五十崎では蛍狩りで捕ってきた蛍を蚊帳の中に放したくさんのホタルを飛ばして遊んでた記憶があります。なお、私の初めての赴任地:柳沢中学校の校区である大洲の田処地区は蛍の名所です。さまざまな条件が重なって大発生した大型のゲンジボタルの乱舞する日が数年に一度ありました。山全体がクリスマスツリーのように輝いていている幻想的な光景はさすがの私も腰が抜けるくらい驚いて見入ってしまいました。年中蛍のいる東南アジアでは蛍好きの日本人限定ツアーがあります。ベトナムのメコン川で蛍見物をしましたが低密度なので日本のような情緒は感じられませんでした。でも、船を漕いで案内してくれた写真の娘さんは「ベトナムの人は全く無視なのに、日本人はホタルが好きでみんな歓喜する!」と言っていました。