名取の守り神

 むかしむかし、ある漁師が、いつものように朝の浜を歩いていると、それは波打ち際に落ちていたんと。
「おや、なんじゃろ。」
漁師が拾い上げてよく見ると、それは古びて傷ついた木造の仏像じゃった。
「きっと、海の向こうから流れていらっしゃったにちがいない。」
そう思った漁師は、仏像様を名取の村へ持ち帰り、みんなで相談したんだと。
その結果、仏像様は村で供養されることに決まり、坊さんや村の衆をよんで、そりゃ村はたいへんやった。そんで、仏像様は海の近くにほこらを建ててもらってな、ずいぶんみんなに大切に祭られたんと。
でも、それから何年かたった嵐の次の日、不思議な事に前と同じような木造の仏像が同じ浜の同じ場所で見つけられたんだと。
「これは何か善い事の知らせに違いない。きっと仏像や神様がこの村をまもってくださるためにやってこられるのだ。」
そう考えた村人たちはその仏像様たちを並べて守り神としてまつったんと。それからは、名取では平和なくらしをおくっているんと。
 いまでは、どの人に聞いても仏像様のありかは分からんが、この名取にあるということは確かなようじゃ。みなさんも仏像様さがしに名取に来ませんか。

 
   話して下さった人・・・名取 村中幸子(取材当時62歳)
   取材・・・・・・・・・・・・・平成3年度
   編集責任・・・・・・・・・松ちゃん (5110)