ゆ る す ま 谷
昔、松にゆるすま谷とゆのがあった。
ある日、みこさんばあさんのだんなさん、りょうさんと、ごんさんが、はぜ取りに行った。
そこに、ここの親方が来た。
「あのやろうに、この木の上から、しょんべんをひっかけてやろう。」
と、ごんさんが言った。
「おー、ぬくい雨が降ってきたと思ったらお前か。おりてこい。」
「私は、木からおりてしょんべんなどしおったら時間がないから、ここからしただけで、親方がおったとは知りませんでした。もう、親方にこんな失礼なことをして、生きていられません。飛び降りて死にます。」
と言って、飛び降りようと片足をあげ、両手を広げて飛び降りるまねしました。
でも、はぜを取る時はロ−プを体にまくのでこんなことをしても何ともない。
「あー、ごんさん。わしはなんとも思っとらん。じゃけん死ぬのだけわやめてくれ。」
と叫びましたが、
「いいえ、こんなことをしては生きておられません。」
とごんさんも飛び降りようとします。
困った親方は
「お−い、りょうさんなんとかしてくれ。」
とりょうさんに頼みました。
「まあ無理だな。ごんは思ったらなんでもする男やけん。でも、ひょっとして酒一本持ってくりゃ分からんがな。」
親方はしかたなく
「一本でも二本でももってくるから。ごんさん死なないでくれよ。」
と言って急いでうちまで帰った。
親方はしょんべんをかけられた上に、酒を何本も飲まれ、大変損をし、一方二人は酒を飲みながらにっこりと笑ったということです。
話をしてくださった人・・松 大垣春子 (取材当時七十七歳)
取材・・・・・・・・・・・・・・平成2年度
編集責任・・・・・・・・・・平成8年度入学 ジョ−ダン(5205)