八 幡 た ぬ き

 昔、明神にたぬきが住んでいたそうな。
そのたぬきは賢かったそうな。
 ある時、漁師が魚を売りに大阪に行くことになった。
それを見つけたたぬきは、
「もうけさしてあげるから、大阪に連れて行ってほしい。」
と、しつこく頼んだ。
 しかたなく、漁師が連れて行くことになった。
するとたぬきは、船底にあった魚の目玉を全部食べてしまったそうな。
「こんな目玉のない魚は売りものにならん。」
と言って、漁師はかんかんに怒った。
 でも、たぬきは
「大阪の街にあげてください。必ず魚を売れるようにするから。」
と言った。
 漁師はしかたなく、たぬきを大阪の港につれていった。
大阪に上陸したたぬきは、坊さんの姿になり、
「今年は悪い疫病がはやる。けれども、目のない魚を売りにくる人がいる。それを食べると疫病にかからなくてすむ。」
と、ふれてまわったそうな。
 しばらくして、やってきた漁師の荷は、目のない魚ばかりだったので、たちまち魚は全部売れてしまったそうな。

 大佐田にもたぬきがいたそうな。
ある日、猟師がそのたぬきをみつけた。
たぬきは子供をお腹に身ごもっていたので、お腹をさすって命ごいをした。
しかし、猟師は鉄砲を撃ってたぬきを殺してしまったそうな。
 猟師は家に帰って、鉄砲のかたづけをしていたら、間違って自分もお腹を撃って死んだそうな。
 今でもがらん山の明神の上には、たぬきが住んでいたというほころがあるそうな。  

 
   話をしてくださった人・・・明神 大本モト(当時90歳)
   取材・・・・・・・・・・・・・・・平成3年度

   編集責任・・・・・・・・・・・平成8年度入学 桜木くん(5219)