玉を作り終えたご主人、さっそく山へ狩りに出かけたそうで、何とも気の早い主人だね。
ところがどっこい、その主人、なかなかの鉄砲の名手で、その夜も獲物をみつけたので、すぐさま鉄砲を撃って当てたそうな。ところがその獲物、カツーンと音がするだけで、いっこうに倒れない。主人はこれは危ないと思ったころ、持ち玉が切れてしまったそうな。そして、闇から甲を装った怪物が飛び出てくると思いきや、鉄瓶をくわえた大猫が襲ってきた。
その後はどうなったかって。主人はやられた!と思ったが、どっこい、その大猫を重の鉄砲の一発でしとめたんだそうだ。
主人は「かくし玉」というて、普通は使わない玉をもう1発だけふところに持っていたんじゃ。それをこめて猫めがけて打ったんじゃそうな。弾がなくなったと思った猫は、主人のまん前まで来ていたもんだから、はずしようもなかった。心臓に見事に命中し、猫ははもんどり打ってぶったおれたそうな。しかし、よく見ると倒れたその猫、自分の飼い猫だったのに主人もびっくり。
あの大猫もかしこくて、弾をいくつもっているか数えて知っていて、主人の鉄砲の弾がなくなるまで鉄瓶でかわし、なくなったとたんに襲いかかったそうな。さすがに賢い猫も、隠し玉には気づかんかったと見える。
それから兵頭家で猫を飼うときには、一貫目を超えないようたいそう餌には気をつかったそうな。
ちょいと話が長くなっちまいましたが、おいらの伯母から聞いた不思議な不思議な昔話はこのへんで。お後がよろしいようで。
お話をしてくだっさた人・・・阿部カメ子(取材当時61歳)
取材・・・・・・・・・・・・・・・・平成3年度
編集責任・・・・・・・・・・・・ユウチャンデース! (5108)