国際問題についての私見         2012.02.10

 現代は、人類有史の中でも激動の時代ということができます。いったいこれから世界はどのように変貌していくのでしょう。特に2011年は、憂慮する変貌の種が、パンドラの箱を開けたときのように一斉に世界中にまかれてしまったように感じます。SNSによる北アフリカを中心とする独裁政権の連鎖的な崩壊、欧州の経済危機、アメリカの衰退、求心力の失われたほつれだらけの肥満国家中国の台頭、中東においてはイスラエル、シリア、イランを頂点にしてほとんどの国家が暴発寸前になっていますし、頼みのロシアも反プーチンでガタガタ、インドも経済的につまずいているし、北朝鮮は全く未知数。比較的静かなのはインドネシアやオセアニアくらいでしょうか。世界の様子を見れば、怪訝に思っていた東日本大震災後の円高もむしろ自然なことのようにさえ思えてきます。

 特に私が憂慮している大きな世界的な問題は、欧米中心社会の終焉と一神教の対立の二つです。人口ばかりかアジア人(それに続いてアフリカあたりも...)の力が大きくふくらみ、もうすぐ、有色人を合わせた実力は、今までの訪米人の考え方で成り立ってきた社会をひっくり返すだけのものになってしまいます。それは、この世紀の中盤あたりにかけて徐々に移り変わっていくのかと思っていましたが、欧州と衰退化はそれを加速してしまいそうです。民主化はこれからも進むでしょうが、まとまった平和な国が続々と生まれるようには思えないのです。これから起こる様々な混乱も世界平和の産みの苦しみであればよいのですが、世界中にバラまかれた膨大な量の兵器、久しく大規模な紛争が起こってないための軍産複合体の動きも気になります。西洋の資本主義は、多くの有色国家を食い物にし富の格差が広がってきました。西洋の個人主義も、少なくともアジアにはなじみそうもありません。もしかすると国家形態だけでなく主義や価値観や文化、思想まで大きく変わるかも知れません。ただの変化ならいいのですが、下手をすると、これまで白人が有色人種に対して行ったことへの報復の時代になる可能性もあります。
 そして、一番深刻ではっきりしている世界の問題は、民族と宗教です。特に砂漠で生まれたきわめて人間至上主義の強い一神教は、互いの神を受け入れないということも大原則です。今までは、先進国にユダヤ・キリスト教の影響が強いこともあって、なんとか均衡がとれていたような気かします。しかし、資本主義と矛盾することも多い特異な経済観念と生活様式や文化を持つイスラム教の国や人々が、力をつけてきています。そこに民族問題や核拡散等が重なると、これからの国際問題は今までのように楽観視できないと思います。
 人間世界のガラパゴスだと言われながらも安穏としていた日本も大きく変わっていく必要があります。特に日本の人権意識は、世界の認識と大きくかけ離れているように感じます。こと部落差別に関する人権教育は徹底的にやるべきだと思います。その他の問題については、さほど苦労しないで、自分の手を汚さないで得ている平和の上に立って、安易な言葉狩りと、弱い精神の人間作りに終始している感すらあります。日本では人名を最優先しますが、真面目な宗教人は自分の生よりも宗教が優先するとか、渦中にある国家は民族国家樹立が人名以上に重要です。毎日のように行われている自爆テロや、イスラム教の女性文化に関して、日本の人権意識でどのように認識するのでしょうか。今まで欧米がやったような、自分の価値観の押しつけや啓蒙をするような実行力はありませんし、それが、人間と地球の関係をゆがめ、人間同士の多くの争いをも産んでいることもは、明らかです。
 そもそもすさまじい変動の世界情勢の中で、日本のように文部科学省が時間をかけて教育の方針やカリキュラムを制定して行く方式そのものに問題があるように思えます。また、文部科学省のお題目や、ゆれ動く政権が出す無責任な政策で、教育現場がかき回されてしまっています。そんなことなので、いつまでも事なかれ主義と、対処療法的な教育に終始するむなしい状況が続くのです。
 そんな状況を少しでも打開させるためには、教育に携わる者一人一人が、国際的に自立したビジョンをもつ必要があります。そのためには、たゆまない研修と未来を展望した熱意ある挑戦が必要でしょう。現場の人間こそが、小手先の教育手法ではなく、教育の道筋をしっかりとふまえて自分の専門で教育に専念する必要があるときだと思います。子どもの競争やボール遊びや、保護者や地域のご機嫌取りばかりしているのではなく、地域もろとも引っ張っていくだけの力をつけていこうとする努力だけでも必要です。そういう意味で、私も、老体にむち打ちながら平和ぼけしてしまいそうな日本を時々離れ、様々な場で活かせる知恵と覚悟、変化を見通した未来への展望を得るための努力をしていきたいと思っています。