周王山麓の夕べ

 17時すぎに部屋から出て、観光団地を散策することにする。
 まず、国立公園のゲートに行ってみる。周王山の観光写真は、登山口にある大典寺越しに観る旗岩が定番である。しかし大典寺は、写真のようにゲートのすぐ向こう側で、ちょっと写真を撮るだけに入園料を払うのはためらわれた。まあ明日入園するからと、そこからターミナルの方に散策することにする。
 方向を転じて、先ほど歩いたバスターミナルへの観光路を逆向きに歩いてみる。食堂の前では、写真のようにうどん打ちのアジュマが客に声をかける。また、噴水などもにぎやかな観光路であるが、下山客が多いと思われるこの時間でも歩いている人は少ない。この山も観光スタイル変化の渦に巻き込まれようとしているのかもしれない。
 写真のように、観光路の中には名物の青松華石の専門店がある。なかなかおもしろい石だが、たくさんあると目玉がごろごろしているようで気持ち悪い。途中に立派な公衆便所も確認した。そのまま歩いていくが、とにかく噴水の類がやたら多い。左下の写真の様に道ばたにも傘をかぶった噴水がある。ヒシャクがあるということは飲み水にもなるということか。
 途中に堰があって、そこからチュバン川を渡ることができる。向こう岸は畑なので、なかなか良い写真が撮れそうだ。堰を渡りながら川の中をよく見ると、小魚がたくさん泳いでいる。さらによく見ると、右下の写真のように川底には、びっしりとシマドジョウがいるではないか。上流を見ると、ズボンをめくって何か採っている人もいる。
 対岸に登ると唐辛子畑がある。赤く色づいた唐辛子が実っている。その奥は、水田が青々と広がっている。このあたりから旗岩や将軍岩の写真を撮る。左下の写真は、いろいろなパターンで撮った中のチュバン川越しの一枚である。日が傾いてやがて旗岩がいい色に染まってくるといい写真が撮れるかも知れない。
 再び観光路に戻り、バスターミナルを目指す。食堂などが少なくなった道路の右に盆栽のハウスがある。外に展示してある鉢やのぞき込んでみた鉢は、日本の盆栽とそんなに変わるものではない。
 その向こう、ターミナル近くには橋が架かっており、どうもその向こうはキャンプ場のようである。子どもの声が聞こえるので、その橋から下を見ると、多くの子どもや大人が右下の写真のように水遊びをしている。
 ターミナルの前には、人が3人ほど入れる小さな小屋があって、これが無人の観光案内所のようである。中には案内コンピュータがあって、パンフレットスタンドもあるが、灼熱下で利用する人は見かけない。パンフレットも利用価値のある物はなかった。その横には電光掲示板があって、周王山の情報を常時流している。また、大きな登山地図もあるので、明日の山行をここでシミュレートしてみる。
 そのまま再びターミナルの建物にはいる。ここまでにコンビニやスーパーのような店がなかったので、今日の夜と明日の食料を調達するためだ。ここには、今までほとんどお目にかからなかったパスポート(スコッチ)、ディンプル、インペリアルなどの洋もののウイスキーも並んでいる。といっても、土産物屋に毛が生えたような店なので、焼酎と山行のためにキャンディーや固形非常食とつまみを買ていどである。カセット販売用のいかにも古い国産といったカセットステレオとスピーカーが印象に残った。
 それから、再び来た道を引き返していったが、残念ながら雲が出てきて、赤く染まる旗岩を見ることはできなかった。後は夕食をとってゆっくりと休もう。
 どこの食堂も同じ様な感じなので、夕食をとるの店はどこにするかなかなか決まらなかったが、結局、宿に近くて店内にも噴水のある「山荘食堂」に入ってみた。客は少なかったが、奥に入ると大きな扇風機が回っていたのでその前に座る。この奥の部屋は川にせり出して建て増ししたような感じで、天井にはアシの簾が張りつめてある。
 メミューを見ながらどれにしようかと迷っていると、食事ですか?と聞かれた。そうだと言うと、テンジャンチゲはどうかと言う。メニューにはないが、それを頼む。写真のように山菜中心のミッパンジャンも豊かでなかなかおいしい。
 食事がすんだら宿に帰る。やっぱり冷蔵庫は冷えていない。テレビを見ながら明日の計画を立てる。窓が小さいためか熱がこもって暑いので、扇風機を入口から外に向けて空気を入れ換える。蚊も少し入ってくるので蚊取り線香がほしいところである。昔事故で死んだ少女の霊が恋人になるというソンユナ主演のホラードラマを見ながらそのうち寝た。
 しかし真夜中2時頃に起きる。どうも大の方をもよおしてきたので、昼にチェックしていた公衆便所に向かう。蚊に無防備な和式トイレは使いたくなかったからだ。食堂街には人気はなく、いくつかの灯りを点けたままで、かなり無防備な状態である。ちゃんと洋式のトイレもあって、安心してもう少し寝る。テレビがアラビア語字幕の中国映画をやっている。
   2006 08/12