楊口出発

 5:00起床、久しぶりにたっぷり睡眠時間をとれるので、テレビをみながら横になり、つけたままで寝入っていた。荷物を整理し、7:30頃フロントに行き声をかけた。眠そうに主人が起きてきてキーを受け取ったが、どうも他の人を見てみても、ただ鍵を置いて出ていくだけだったようだ。前金でしかも料金を追加するようなこともないので、それでもOKなのだろう。
 バスは8:50出発と書いてあるらしいが、余裕を持ってバスターミナルに向かう。とにかくこの町は迷彩色の若い軍人の姿をよく見かける。バスターミナルにも10人ほどの軍人がいる。切符売り場で、「ソクチョ・ハンジャン」と言って、言われた5500Wを支払って赤い切符を買い、8:50の出発時間を確認した。
 まだ1時間近く時間があるので、ターミナルの前のトゥーワ食堂(シクタン)に入った。さて何をたのもうか。表示は全てハングルのみ。まわりを見ると多くのミッパンチャンが出してある。何にしようかとすぐ上の大きな品書きを見る。朝だし、さっぱりしたものがいいなあと「ネンミョンイソヨ?」と聞いてみる。どうもあるらしいので冷麺にする。ヨルム(若大根)ネンミョン3500wとあるが、3000wだったことをみると素ネンミョンだったのかも知れない。とはいっても細く切った昆布の煮物、ペチュキムチ、細大根のキムチ、もやしキムチ?、ゼンマイのミッパンチャンがあり、コチュジャンとカラシもふくめ、別々の皿に入れられ50cmもの大丸盆一杯に出てきて豪華なものである。特にネンミョンを入れてある器が径が25cmもある厚めの半球形ステンレスで、どうも食べるための器という気がしない。これをステンレス製のチョッカラでつつくわけだが、どうもカチャカチャという金属音と感触はいただけない。麺は、ネンミョンらしい硬めの細麺で糸こんにゃくみたいな黒っぽい麺である。ここも韓国でも有数の寒冷地なのでソバ麺なのかも知れない。酢かムルキムチのちょっと甘みのある酸味があって夏でも食べやすい味で、だしこそ牛骨を使っているのだろうが、千切りにしたキュウリやにんじんと海苔やゴマがたっぷり入れられ植物性の健康食品だ。大きな氷の固まりが浮いているのもおもしろい。味を見ながらコチュジャンやカラシを少々加え、しっかりかき混ぜて豪快に食べていく。他の人の食後のテーブルを見るとキムチなどミッパンチャンは、半分ほど残しているようだ。韓国では残さず食べるのは失礼であるらしい。食事を残すのが嫌いな私だが、ミッパンチャンは一切れずつ残して席を立った。
 まだ少し時間があるので、PCバンが乱立するバスターミナル周辺を撮しておくかとデジカメを取り出した。カメラを構えていい位置を探していると近くの店の前に座ってくつろいでいたおじさんが、ちょっと厳しい目で私に何かを言った。どうも写真を撮ってはいけないらしい。多分そうだろうと思ってはいたが、私はカメラをしまった。といってもこっそり一枚は撮ったが...。それがこの写真である。ターミナル内に入り、きょろきょろする。ふと、切符を見るとどう見てもどこにも束草の文字がないと思われる。販売所の上の料金の掲示板にはソクチョ8500wと書いてある。そして5500wがフンジョンというところの金額で、切符のハングルもフンジョンの字がある。もう一度売り場に行き、「イゴ・ソクチョ?」と聞くとえっというような表情をしてもう一度確認して束草までの切符を受け取る。どうも発音が悪くてフンジョンの切符を買っていたらしい。
 外のベンチで待っていると、おばさんが声をかけて来た。見るとさっきの食堂のおばさんだ。心配になってきたのかも知れない。切符を見て、このバスに乗るんだと言って(たぶん)目の前のバスを指さし、私が「カムサンニダ」というとにっこりとした。発車15分ほど前にバスに乗り込んだ。

   2002' 8/24