西帰浦から城山里へ

もと来た道をとって返し、西帰浦の街に入る。道は、歩道を掘り返す工事をしていて歩きにくいが、日本の街角といった感じである。駄菓子屋には自転車で乗り付けた子供がへばりついており、ミニ電子ゲームに興じている。傍らにはガチャガチャもあり、どこでもあるようで今では日本で見られなくなってきたなつかしい風景である。
 中央路に出ると通りも広くなる。風が強いためか路上の案内板は固定ではなく、ぶら下がる方式である。少し歩くと、左手に明らかに銭湯らしき建物がみえてくる。そして右手にも...。入ってみようかと真剣に考えたが、全財産をかついだ身ではちょっと心配で、どうせ城山にもあるだろうからとあきらめた。
 やがて右手にバッティングセンターらしきものが見えてきた。料金箱を見ると300w。おもしろそうなのでやってみることにする。システムは日本と同じ(軟球)なのだが、置いてある金属バットはボコボコである。コインを入れ、バッターボックスに立つ。機械が動き出してボールが飛んでくるが、なんとその距離が異様に近い。さらにテンポが速いのだ。インコースに食い込んできたら、この酔っぱらいによけられるか?不安とテンポに遅れて、数球は扇風機状態。でも、すぐにボールがど真ん中ばかりなのに気づく。ミート打法に切り替えて、テンポを合わすように打てばきれいに当たりだした。何球だったか数えていなかったが、最後の10球はガンガン打ちまくってやった。ふと振り返ると、5〜6歳の男の子がネットにへばりついて凝視している。向きになっていた私も、われに返る。そのすぐ横のテントのようなところから女の子のはしゃぐ声が聞こえる。行ってみると何と貸トランポリンである。小さな部屋にアジョシも詰めていて監視しているが、薄暗く4mほどの高さの天井で、大丈夫なのだろうか? 西帰浦の街は、ほとんど日本の地方都市なのだが、注意してみると電話の付いた自動販売機など一風変わったものもあってなかなかおもしろい。バスターミナルに入って、経路図を見てみると、西回りのバスは城山を通って済州に向かっており、日出峰は城山からちょっとはずれたところにあるが、とりあえず城山に行って考えよう。発音が悪くて、とんでもないところの切符を買わされたらいけないので、地図の城山日出峰を指しながら切符を購入する。その切符をもって外に出て、バスの番号が分かりにくいので訪ねると、すぐに出発するというので、その運転手がバスまで案内してくれた。席はもちろん運転席のすぐ近くである。
 バスが西帰浦の街を出ると、すぐに人家はほとんどなくなるが、時々集落や学校もみえる。小学校には相変わらず李舜臣の立像と世宗大王の座像がある。校庭では小学生が小さな四角い凧を上げていた。これらののどかな景色を興味を持って眺めていたが、あまりに単調なのでやがてうとととしてくる。
 ふと目を上げると前方に異様な岩塊がみえてきた。これこそ日出峰である。そろそろ城山だなあと思っていると、日出峰はどんどん近づいてきてすぐ眼前に迫ってきた。やがて運転手が、私に着いたので下りるようにという。見るとバス停は「城山里」である。どうもこのバスは、日出峰まわりらしい。結局、城山は寝ているうちに通過して、日出峰直下の集落までこれたようだ。途中、それらしき施設はなかったようなので、バスターミナルは済州と西帰浦くらいにしかないのかもしれない。日出峰の登山口はすぐそこで、天然の岩の王冠は目の前である。とにかく宿泊場所を探してゆっくりしよう。「旅館」のハングルを探すが、これがない。そのかわり「ミンバク」の文字がやたらある。この際、民宿というのもおもしろいかも。普通の古い民家からビルまでいろんな民宿があるが、私は最も日出峰に近いビルの民宿を選んだ。そのビルは、食堂、薬局、そしてPCバンも兼ねている。目の前にはコンビニもあって、もっともいい条件だったからだ。

  H14.12.28-4